ポリオ不活化ワクチンの認可を求める動きについて - 2010年05月27日公開
少し前になりますが、2010年2月18日にポリオワクチンの予防接種に関連した健康被害が発生しました。
ワクチン接種者からの二次感染が疑われるなどと大きく報道されたため、まだ記憶に新しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本は、長年続けられてきた予防接種の効果もあり、2000年8月にWHOに対してポリオが根絶されたことを正式に宣言している、ポリオ根絶国のひとつです。
そんな日本のポリオ予防接種には「生ワクチン」と呼ばれるワクチンが使用されています。
そもそも、ポリオワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。
生ワクチンは、毒性を弱められた【生きたウイルス】が入ったワクチンです。実際の生きたウイルスを使用するため、抗体をより確実に獲得でき、感染予防効果も高いです。
ですが、被接種者の体内で接種されたウイルスが繁殖するうちに毒性を回復、場合によっては排泄されたウイルスが周囲の人に感染することがあります。
また、被接種者のうち約440万回に1回、被接種者の周囲の人で約580万回に1回というごく稀なケースではあるものの、ポリオと同じような麻痺症状を発症すると言われています。
一方、不活化ワクチンは、死んだウイルスから免疫獲得に必要な部分を取り出し、毒性をなくしたワクチンであるため、ワクチン接種による麻痺症状が発生する確率はかなり低くなります。
ただし、当然ながら生ワクチンに比べると抗体価はあがらず、免疫効果は不十分となる可能性があるとされています。
世界的には、生ワクチン接種による麻痺発症をなくすため、不活化ワクチンの採用が検討されるようになりました。ポリオが流行していないアメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどでは不活化ワクチンが使用されています。
アメリカでは生ワクチンが用いられていましたが、併用期間を経て、2000年から原則不活化ワクチン単独方式に切り替えられています。WHOでも、野生ポリオウイルス感染阻止のため、この段階を踏むことが考えられています。
日本はポリオ根絶を宣言しているので、このフェーズの基準に照らし合わせれば併用期間に移行してもよい段階ですが、不活化ワクチンは日本ではまだ承認されていません。
そのため、同じポリオワクチンでも、不活化ワクチンは現在無料で接種を受けることはできません。
有料での接種を行っている医療機関もありますが、不活化ワクチン接種による健康被害があった場合は、任意接種という扱いになり、救済の対象になりません。
以前より、生ワクチンによる健康被害をなくすため、不活化ワクチンの承認および定期接種への組み込みが求められてきましたが、今回のポリオ発症で再度声が高まりつつあります。
こうした声を受け、厚生労働省は2010年4月8日、国内のワクチン開発メーカー4社に対して、不活化ポリオワクチンの開発促進を要請する依頼文を出しました。
4社は既に、ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合ワクチンに不活化ポリオを追加した四種混合ワクチンの開発に着手しており、来年2011年末頃には薬事承認が申請される見通しだそうです。
2009年秋に承認された子宮頸がんワクチンもそうでしたが、世界的に使用されているものの、日本で承認されていないワクチンは多数あります。日本で受けることができる予防接種はアメリカの半数ほどしかありません。
厚生労働省感染症分科会予防接種部会においても、ワクチン行政に関する問題が多数指摘されており、検討が必要と考えられています。現在、ワクチンにかかわる分野について、関係各所からヒアリングが行われ、改善に向けて動き始めたようです。
しかし、たとえポリオの予防接種が不活化ワクチンに切り替わり、麻痺の発症はなくなったとしても、全く副作用がなくなるというわけではありません。
どのようなワクチンでも副作用は存在します。海外ワクチンの認可に時間がかかるのも、海外の症例に依存しない十分な研究と検討が行われ、安全性の確保が行われているためです。
確かに、認可されることにより、接種できるワクチンの選択肢が広がり、より安全な予防接種を受けることができるようになるかもしれません。
しかし、「受けると決まっているから」という理由だけではなく、なぜ予防接種を受けるのか、そしてどのようなリスクが考えられるのかを理解した上で受ける。つまり、被接種者側の意識の向上が肝心ではないかと考えています。
予防接種部会でも情報提供の在り方について話が挙がっているので、今後改善されていくかもしれません。
ただ、情報提供する側はより多くの選択肢を提供することが、一方、情報提供される側は情報をただ求めるのではなく、その中から適切に選びとっていくことが重要ではないでしょうか。
- 担当
- 岩谷 紗也子
- 役職
- ヘルスプロモーショングループ
2008年4月 入社
主にユーザサポートを担当し、めきめきと頭角を現している。
丁寧な仕事に定評のある若手メンバ。
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