ABC検診(胃がんリスク検診)について - 2011年11月24日公開
国のがん対策の基本方針を示す「がん対策推進基本計画」の第1期(平成19年~平成23年の5年間)がまもなく終わります。
相談支援センターの設置や、放射線治療や化学療法部門の設置などは目標を達成していますが、がん検診の受診率については計画実施前とほとんど変わらず、「受診率50%以上」という目標の達成は絶望的とみられています。
女性特有のがん検診や大腸がん検診は一定年齢の方に対して無料で受診できるクーポン券が配布されていますが、配布されたときは受診してもそれ以後の毎年の受診へはつながっていないようです。
受診しない理由は人それぞれだとは思いますが、胃がん検診ついては「バリウムを飲んで、台に乗って体を傾けてのエックス線撮影、あれがどうも…」という人も多いのではないでしょうか。
私自身今年40歳となり、各がん検診を受診しました。胃がん検診は今回「異常なし」でしたので、毎年受診した方が良いことはわかっていても、正直言って毎年でなくてもいいかな、と思ってしまいました。
この胃がん検診について、胃がんの主な原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染と胃の粘膜の萎縮を血液で調べる胃がんリスク検診(以下ABC検診)を導入する自治体や企業が増えてきています。
今回のコラムではこのABC検診について取り上げたいと思います。
胃がんは肝炎ウイルスによる肝臓がんやHPV(ヒトパピロ-マウイルス)による子宮頸がんと同様、ピロリ菌による感染症由来のがんとされています。
胃粘膜の萎縮に伴い、消化酵素に関連する物質ペプシノゲンの分泌量が減るため、ABC検診ではピロリ菌感染を示す抗体の有無とともに、ペプシノゲンの血中量を調べて個人の胃がん発生のリスクを判定します。
【ピロリ菌抗体とペプシノゲン検査によるABCD分類】
| 判定 | 区分 | ピロリ菌 | ペプシノゲン |
| 正常 | A群 | 陰性 | 陰性 |
| 異常 | B群 | 陽性 | 陰性 |
| 異常 | C群 | 陽性 | 陽性 |
| 異常 | D群 | 陰性 | 陽性 |
A群 胃は正常、胃がん発症の可能性は極めて低い。
B群 胃がん発症のリスクあり。3年に1回の胃内視鏡検査が推奨される。
C群 胃がん発症のリスクが高い。2年に1回の胃内視鏡検査が推奨される。
D群 胃がん発症のリスクが極めて高い。毎年の胃内視鏡検査が推奨される。
基本的に、感染がなく萎縮も進んでいない人をA群、感染しているが萎縮が進んでいない人をB群、感染していて萎縮の進んだ人をC群、萎縮が進みすぎてピロリ菌が住めなくなった人をD群と4群に分類しています。
A群、B群、C群、D群の順で胃がんになる危険性が高まり、リスクに応じて胃がんを見つけるための内視鏡検査を受けます。
この分類はピロリ菌を除菌しない限りほとんど変わることはなく、血液検査は5年に1度程度でよいということです。
ABC検診を推進しているNPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構(理事長 三木一正氏)によると、胃がんの年間発生率はA群はほぼなく、B群は1,000人に1人、C群は500人に1人、D群は80人に1人程度だそうです。
なお、以下に該当する方は、治療が優先される、もしくはリスク判定が困難であることから当検診の対象になりません。
・潰瘍等で治療中
・胃切除後
・腎不全(クレアチニン値 3mg/dL以上)
・ピロリ菌除菌後
ABC検診については、平成16年度から平成18年度にかけて行われた研究課題「胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジー」(厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究)に詳細が記載されています。こちらの研究報告書は厚生労働科学研究成果データベースにて閲覧可能です。
徐々に広まりつつあるABC検診ですが、未だ従来のエックス線検査に代わるものとしては認められておらず、平成23年度地域保健・健康増進事業報告の作成要領において「胃部エックス線検査以外による検査(上部消化管内視鏡検査、ペプシノゲン検査、ヘリコバクター・ピロリ検査等)のみの場合は計上しないこと」と記されているとおり、報告の対象外となります。
ABC検診は弊社システムのユーザ様でも既に導入されており、今後導入する自治体や企業が増えてくれば、十分な医学的根拠(エビデンス)も得られるのではないでしょうか。
先日、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一氏が、血液1滴でがんや生活習慣病などを早期診断したり、画期的な治療薬の開発につながる新技術を開発したとのニュースが報道されました。
こうした技術革新により、より簡単な検査でがん検診を行うことができれば、受診率の向上やがんの早期発見、ひいては医療費削減へとつながって行くのではないかと期待しています。
- 担当
- 高井 教夫
- 役職
- ヘルスプロモーショングループ 係長
1997年4月 入社
保健システム一筋のベテランリーダ。
日々後輩から顧客まで手厚くサポートする。
最初 |
第87回 麻しん(はしか)について | 一覧 |
第89回 動物の愛護及び管理に関する法律について |
最後