難病法案について - 2014年06月05日公開

難病法案について
平成26年5月21日、参議院本会議にて「難病の患者に対する医療等に関する法律案」(以下、難病法案)が可決、23日に成立しました。平成27年1月1日(一部平成27年夏)の施行を予定しています。

難病対策は治療方法の研究事業名目で40年以上前から実施されていたにも拘らず、法的根拠が曖昧な状態が続いていました。そのため、今回の法案成立は難病対策にとって非常に画期的なものと言えます。※難病対策の現状や難病法案制定に関する経緯は、第102回コラムで紹介しています。(難病対策の法制化について : http://www.wel-health.jp/column/no102.html

これまでの難病対策は法的根拠が不十分だったことから、国や地方自治体が負担している対策に係る費用の根拠なども含め、制度として位置づけが非常に不安定でした。しかし、今回の法案で難病対策に係る費用負担が、国や地方自治体の義務として明記されたことにより、安定した財源が確保されることになります。難病は治療法が確立されてないため、治療には時間がかかります。そのため、安定した財源が確保された制度になるということは、患者の経済負担に対する心理的な不安を大きく軽減させることに繋がります。また、自己負担割合を3割から2割に引き下げる、自己負担限度額は入退院を繰り返す難病の特性を考慮して外来・入院を区別しない 等、自己負担についても全般的に見直しが行われています。

また、難病医療費助成の対象疾患として指定されているのは現在56疾患ですが、今回の法案成立に伴い、約300程度に増加する見通しです。対象疾患は、今後、国が設置する第三者委員会で検討・選定されますが、対象疾患が大幅に拡大されることにより、これまで医療費助成の対象外だった患者の経済的負担が軽減されると考えられます。早速、平成26年5月28日には、対象疾患を検討する委員会の設置を議題とした疾病対策部会が開催されました。


今回の法案には、医療費助成の財源確保や対象疾患の拡大以外にも、調査及び研究の推進(国主体)、療養生活環境整備事業の実施(都道府県主体)も盛り込まれています。

■調査及び研究の推進
・難病患者情報のデータベース化
症例が少ない難病は、治療研究が困難であることから、研究を推進するため、難病患者データベースを構築して、症例情報の集約を行います。データベース化することにより、症例の経年的なデータ蓄積も可能となることから、治療研究の基礎情報として役立ちます。

・難病拠点病院の設定
難病治療研究の拠点として「新・難病医療拠点病院(総合型)(仮称)」が三次医療圏(概ね都道府県単位)ごとに1か所以上、そして、「難病医療地域基幹病院(仮称)」が二次医療圏(概ね都道府県単位に5~10のエリア分けをした地域)ごとに1か所程度指定されることになります。難病は治療に携わる専門医が少ないことから、三次医療圏ごとに拠点病院を設置し、より細かい単位である二次医療圏の基幹病院と連携することにより、患者が専門医のいる遠方の病院まで赴かなくても、治療が受けられる体制整備を図ります。

・難病支援ネットワークの形成
各医療分野の専門家が集まった難病支援ネットワークを構築し、全国規模で難病に対する正しい診断ができる体制の整備を行います。前述の難病拠点病院が、難病支援ネットワークに対して希少な難病に対する問い合わせを行えるようにすることで、特定の専門医しか治療ができない難病に対する柔軟な対応が可能となります。また、希少な難病の場合、特定機関でしか検査ができない場合もあります。そのようなケースに対しても難病支援ネットワークに対して検体を送付することで、スムーズな検査の実施を目指しています。

■療養生活環境整備事業の実施
・難病相談体制や難病相談・支援センター機能の強化、保健所を中心とした難病対策地域協議会(仮称)による適切な支援 等、サービスの強化・拡大・充実が挙げられています。また、附帯決議において、療養生活環境整備事業のような義務的経費ではない事業については、地域間格差につながらないように配慮すること、といった記載がされており、義務ではない事業についても配慮がされています。


このように今回の法案では、データベース化や拠点病院の指定など、難病の調査研究を推進するためのインフラ整備も盛り込まれています。難病は希少な疾患であることから、これらのインフラ整備がすぐに効果を表すことは難しいかもしれません。しかし、国の施策として患者の負担軽減を考慮した制度見直しや調査研究を推進するための新たな取り組みが実施されることは、今後の難病対策における大きな一歩であると言えます。法律を作るだけで終わることなく、定期的な見直し等によってよりよい制度となっていくことを期待します。


担当
名取 剛

2000年4月 入社
長期に渡り福祉パッケージに携わった経験を生かし、
保健分野に活躍の場を広げるベテランリーダ。

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