結核治療のしくみ ~DOTSとコホート分析~ - 2016年05月16日公開

結核治療のしくみ ~DOTSとコホート分析~
「結核」は結核菌の飛沫核(空気)感染によって広まる感染症です。結核菌に感染後すぐ発病するとは限らず、また、初期症状が軽く進行も緩慢なため、発見・診断の遅れによる症状の悪化や、感染拡大が起こりやすいです。※参考)第75回 結核について

かつて結核は日本における死因第1位でした。「昔、結核は死亡率の高い病気だった」というイメージがある方も多いのではないかと思います。第二次世界大戦後、日本の結核罹患率は順調に低下し、2007年以降には人口10万人あたり20%を下回るようになりました。しかし、「低まん延状態」と定義される10%以下にはまだ至っておらず、大都市では20%を超えているところもあります。結核のまん延を防ぐには、早期発見と治療(主に服薬)の徹底が求められます。
その仕組みとして、以下のような内容が挙げられます。

■DOTS(直接監視下の短期化学療法)※読み方:ドッツ
結核の治療はほとんどが薬による治療です。結核の初期症状は軽く、すぐに改善しますが、結核菌を死滅・休眠させるには時間がかかることがほとんどです。服薬期間にもかかわらず、症状がなくなったからと患者が勝手に途中で服薬を中断してしまうと、体内に残っている結核菌がそれまで治療に使用していた薬剤への耐性を持ち、より治療が困難な多剤耐性結核(※1)を発生させてしまう危険性があります。そこで、薬を患者に確実に服用してもらうために開発された治療法がDOTSで、医療従事者が患者に薬を手渡し目前で服薬を確認します。患者を確実に完治させるための質の高い服薬支援の仕組みです。

1990年代、WHOが結核対策としてDOTS戦略(※2)を展開し、世界標準の結核治療方式となりました。日本では2000年に「日本版21世紀型DOTS戦略」が発表、さらに2003年にはDOTSの積極的な取り組みを推奨する通知が出され結核医療の中心的な戦略として全国的に取り組まれるようになりました。

どのような服薬支援が必要であるかを判断するためには、治療中断のリスクがあるか患者を客観的に評価する必要があります。そのため、患者との面談の中でヒアリングした情報や、家族や関係機関からの情報をもとに、結核という病や治療に対しての理解、アルコールや薬物など治療中断リスクの有無、患者の心身・生活状況等について評価します。リスクの高さを判定するため、アセスメント票を用いてリスクを数量化する(評価項目をリスト化し、リスクによって点数をつける)といった方法が取られています。その後、保健所は、アセスメント結果や主治医の方針、患者の意向等を踏まえて、個別患者支援計画を作成します。また、医療機関と保健所合同でDOTSカンファレンスを実施し、治療終了に至るまで切れ目なく服薬支援を行います。DOTSカンファレンスは、入院時のみならず、退院時や退院後、服薬開始時など状況の変化にあわせて随時実施され、患者の状況に合った支援計画の評価・見直し、情報共有等が行われます。

■コホート検討会
患者を1つの集団(コホート)と見立て、その地域全体の服薬支援活動の評価や、結核医療の問題や地域連携体制の在り方の検討を行います。DOTSカンファレンスが個々の患者の服薬の取り組みについて検討するのに対し、コホート検討会ではその地域における個々の服薬支援結果から浮かび上がる結核治療全体の問題や、地域性にあわせた支援方法の検討を行うという意義があります。


DOTS治療やコホート分析の結果を還元していくことで、結核治療全体の質の向上や結核まん延の予防に繋がります。結核の治療には、医療機関・地域・保健所の積極的な連携と協力、計画的・規則的な治療が必要ですが、なにより私たち一人ひとりが結核という病とその治療について正しく理解することが不可欠と言えるでしょう。



※1)参考)第113回 多剤性結核について
※2)DOTS戦略には、服薬の直接確認(直接監視下の短期化学療法)だけでなく、「結核対策への政府の強力な取り組み」「有症状受診者に対する喀痰塗抹検査による患者発見」「薬剤安定供給システムの確立」「整備された患者記録と報告体制に基づいた対策の監督と評価」も含まれる。



担当
光石 遥

2015年4月 入社
システムの導入・保守やパッケージ開発に携わるメンバ。
思いやりのある細やかなサポートは、メンバからの信頼も厚い。

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